
タウンワークやリクナビNEXTなどの求人情報誌や求人情報サイト。
柴田が所属するリクルーティング事業本部は、それらの求人メディアの提案を通して、数多くの企業の採用活動を支援している。
しかし、その仕事は、単に人を採用したいという企業のニーズに対して、求人メディアを提案するだけの仕事ではない。
「もっと成長できるはずの企業が、そのチャンスをみすみす逃している。優秀な人材を採用するだけでも、この企業は劇的に変わるはずなのに…。そんな歯がゆい思いをすることがよくあります」。柴田が出会った印刷機器の輸入商社A社も、まさにそんな“可能性を秘めた企業”だった。
柴田がA社を知ったきっかけは、クイックの既存顧客リスト。これまでに一度だけクイックと取引があったA社を担当営業として引き継いだのだ。引き継ぎの挨拶で訪問した柴田は、すぐにA社の大きな可能性に気付くことになる。
「貿易会社に勤務されていた社長が、あるドイツのメーカーが開発した熱転写印刷機に惚れ込んで起業されたんですが、その印刷機の性能というのがとにかくすごい。安価にも関わらず、これまで日本の大手衣料品メーカーが導入していた大型印刷機を上回るほどの上質な印刷が手軽にできてしまうんです」。
A社はその印刷機の日本総代理店としてドイツのメーカーと独占契約を結び、日本における販売を一手に担っている企業。印刷の度に必要となる転写紙の販売も行っているため、安定した売上も見込めている。「こんな優良企業が自分のリストの中に眠っていたこと自体驚きでしたが、それ以上に不思議だったのが、どうしてA社は会社の規模をもっと拡大しないのか、ということでした」。社員数は、わずか十数名程度。強力な商品を擁するA社なら、売上も会社規模も今の数倍は見込めるはずなのに…。
しかし、これまでのA社の営業戦略を聞いた柴田は、その理由を理解する。「これまでA社は業界の展示会に商品を出品し、そこで興味をもってくれた企業にのみ商談を持ちかける…いわゆる反響営業で販路を切り拓いていました。もちろんA社にとって展示会は有効な営業戦略です。ただ、それだけでは、残念ながら先も見えている…」
限られたマーケットの中では、大幅な売上アップは狙えない。企業として今以上の成長を目指すなら、新しいマーケットを開拓していくしかない。「社長も新規開拓の必要性を理解されていましたが、現在の体制でも十分可能だと考えられていたのです。しかし、A社で活躍されている営業の多くが、新規開拓をほとんどしたことがない方たち…。それが原因で、これまでは新規開拓が思うように進んでいなかったんです。新規開拓のできる営業が数人採用できれば、すぐにでもA社の売上が数倍に跳ね上がることは間違いありませんでした」。
これまで、様々な企業を、採用支援を通して成長・躍進させてきた柴田にとって、A社はとてつもなく大きく成長する可能性を秘めた、ダイヤの原石に見えた。
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しかし、そんな柴田の提案が、すぐにA社に受け入れられた訳ではない。「仮に柴田君の言うように新たに営業を採用するとしても、ハローワークで十分採用できる。わざわざ高いお金を払って求人広告で募集する必要性は感じない」。
経営に対して何の危機感も持たれていなかったA社は、柴田の提案をあっけないほど簡単に退けてしまう。
それでも柴田は、A社を訪問し続けた。それは、目先の売上以上に、A社の企業としての成長を、この手で支援したいという強い想いがあったからだ。「新規開拓ができる営業を採用し、もっと幅広い業界に販路を広げ、会社の成長スピードをあげましょう」。柴田は訪問するたびに、採用によって変わるはずのA社の未来を熱く語り続けた。
そんな柴田の想いが伝わったのは、初めての訪問から2年が過ぎた頃のこと。「時間はかかりましたが、ようやく採用支援の機会をいただけたんです。ここで採用を成功させれば、次の提案にもつながる」。
そんな想いが通じたのか、柴田が提案した求人広告には通常の応募数を大きく上回る500名の応募が集まり、A社はこれまで採用できていなかった新規開拓経験の豊富な営業2名の採用に成功する。そしてその内の一人が、東京支店の責任者として関東での新規拡大に大きく貢献。現在A社の業績は柴田が想定した通りの軌道を描いて伸び続けている。



